ミュシャ展「スラヴ叙事詩」作品サイズも込められた思いもメガ級!

スラヴ菩提樹の下でおこなわれるオムラジナ会の誓いスラヴ菩提樹の下でおこなわれるオムラジナ会の誓い1926年(未完成)

アール・ヌーヴォー時代のパリで名声をあげた芸術家アルフォンス・ミュシャ。優雅な女性像を独特タッチで表現した劇場ポスターのシリーズや本の挿画などは、広く知られるところですね。これまでのミュシャ展ではお馴染みですから。

でもですね、今回のミュシャ展は全く別物。
晩年の大傑作「スラヴ叙事詩」全20作品を一挙公開するという大企画です。過去にはその作品の大きさから国外での展覧会は断念されてきたようです。チェコ国外で全20作品が一度に観られるのは、今回日本が世界初ということなので、この機会を逃せません。

ところで、チェコ語では、ミュシャはムハと呼びます。展覧会では、ムハで通してました。

フランス、アメリカで活躍した後、50歳で故郷のチェコ(当時はハンガリー領領置下のオーストリア)に戻ったミュシャが、17年かけて完成させた「スラヴ叙事詩」

6メートル×8メートルの超特大サイズのカンヴァスに描かれた作品。
想定外のスケールです。
近づきすぎると視野に入りません(^_^;)

原故郷のスラヴ民族原故郷のスラヴ民族(チケットの中の作品)

1作品目「現故郷のスラヴ民族」の前に立っただけで、あぁ、もう一回観に来たい、と思ってしまいました。

「スラヴ叙事詩」を知りたい!は音声ガイドが解決。

想定外のスケールに驚きつつ、でも、「スラヴ叙事詩」について知る人はそう多くないのではないでしょうか。私は全く知らず、古代ギリシアの神話、寓話を綴る「ギルカメッシュ叙事詩」の別シリーズと思っていたくらいです。

「スラヴ叙事詩」は、チェコに伝わるスラブ民族の神話や歴史的事件をモチーフ描いたミュシャの20点に及ぶ連作。同国の作曲家スメタナの交響詩『我が祖国』に想を得たと伝えられらたりもしています。世界的な書物とかではなく、ミュシャのオリジナルなんですね。

ミュシャは作品を通して、スラブ民族の平和を願いつつ自由と独立の歴史を表現しています。

せっかく20点揃っているのだし、それぞれの作品に込められたメッセージをぜひとも理解したい、ということで、今回も音声ガイド様の説明に委ねることにしました。

今回のガイド役は女優の檀れいさん。優しくもきっちりした声で、とても聞き取りやすかったですし、スラブ民族の歴史と作品の紐付けができそうにない方は、音声ガイドのご利用をおすすめします。

fukuro01聖アトス山

聖アトス山
ギリシャのアトス山は正教会の最も神聖な場所である。スラヴ民族をビザンティンの教育や文化へとつないだ正教会への賛辞をこめた作品。1926年 テンペラ、油彩/カンヴァス 405×480cm

ポスターや本の挿画とはスケールもメッセージも異なりますが、パステル調の色とか、陽光の淡さとか、濃淡のメリハリや柔らかいイメージなど、今まで知っているミュシャの部分も垣間見れたりもします。

作品全体を通して、個人的に「息苦しさと安堵」を感じたのですが、それは作品に理想(メッセージ)と現実が共存しているからかな、とか思いました。例えば、スラヴ民族が自由を勝ち取ったしたシーンに犠牲になった人々も同時に描かれていて虚しさが漂っていたり。地上で収穫祭を行っていても空には敵の暗雲の姿があったり。いろいろな暗示、暗喩。

20点中5点だけ、撮影が許されています。
「スラヴ叙事詩」作品のプチ解説はこちらから。

今回の展覧会では、パリで活躍したミュシャが「スラヴ叙事詩」を描くに至るまでの足跡を約80点の作品を通じて辿りつつ、これら幻の最高傑作の全貌を一挙、鑑賞することができます。

「スラヴ叙事詩」の中から伝わってくる、「人間としての普遍的な愛への願い」。
人はお互い良く知り合えば、争うこともない。
ミュシャの言葉です。

平和へ向かうために、気づくべきことは?
現在の私たちにも問いかけられているようでした。

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国立新美術館開館10周年 チェコ文化年事業
ミュシャ展
~2017年6月5日(月)
展覧会ホームページ:http://www.mucha2017.jp/
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展覧会補足

開催されたばかりというのもあって、チケット購入で結構人が並んでいます。私はこの列を見た瞬間、スマホでオンラインチケットを購入して入場したので待ち時間0でした。

なので、事前にチケットを用意することをおすすめします。
ちなみに、列の前でオンラインチケットを3分で購入し、入場すると、優越感を味わえます。展覧会と合わせてどうぞ(^_^;)
●オンラインチケットはこちらから